目を左右に動かしてトラウマを和らげる「EMDR」の独学を始めた

トラウマケア

目を左右に動かしてトラウマを和らげるEMDRの独学を始めた

トラウマ研究を50年以上続け、名著『身体はトラウマを記憶する』の著者ベッセル・ヴァン・デア・コルク氏が薦める治療法に含まれるEMDRの独学し始めた。

EMDRとは

EMDRとは、安全な環境でトラウマとなる記憶を思い出しながら、目を左右に動かすことで、脳内の情報処理を活性化し、その記憶に伴う負の感情を和らげる方法だ。

1987年にフランシーヌ・シャピロ医師が偶然発見した方法で、公園を歩きながら不快な記憶を思い出したときに目を左右に動かすと、感情が和らぐことに気づいたのが始まりだ。

現在では、安全かつ効果的に行うための手順(プロトコール)が整っている。

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessingの頭文字)は「眼球運動による脱感作と再処理法」と和訳されることが多い。

私のEMDR体験

実は私は以前、主治医に一度EMDRをやってもらったことがある。でも、全く効果を感じられなかった。

主治医は、先の細い棒を左右に動かしながら質問していたが、パソコン画面ばかり見ている様子で、

私は「なんで患者の私を見ないんだろう?」と気が散ってしまい、集中できなかった。

さらにEMDRが一回数分で効果が出るほど単純なものではないのに、「継続したいか」と尋ねられることもなかった。

結果、練習台にされたような感覚だけが残ったため、私はEMDRに良い印象を持てないまま今日に至っている。

独学でのEMDR

それでも信頼のおけるベッセル氏が薦めていることを知り、私は「自分でも学んでみる価値はあるかもしれない」と考えを改めた。

これまで、EMDRは他人に、目の動きを誘導してもらわないとならないと思い込んでいた。

けど、ニュートンのゆりかごのような動画さえあれば、自分でもできる気がした。

実際、YouTubeには画面上で球体が左右に動く動画や、EMDRの手順を実践解説する動画が想像以上にある。

発案者のシャピロ医師の個人的な経験に基づいているのなら、個人が独学できると勇気づけられた。

慢性的なトラウマを抱え、仕事もできず、主治医が初心者である私にとっては、独学で取り組む方が現実的かもしれない。

感情と制度への思い

EMDRの独学なんて誰も薦めない。必ずプロに頼れと言う。でも、経済的な余裕も、信頼できる医師もいなければ、独学という名の自己実験も現実的な選択肢にならざるを得ない。

EMDRがトラウマ・PTSD(心的外傷後ストレス障害)治療に注目され始めたのは1990年代後半から2000年代初頭。

国際的には20年以上の歴史があるにもかかわらず、日本では保険適応されておらず、患者が全額自己負担だ。

代わりに、トラウマへの効果が薄いとされる薬を、副作用を抱えつつも処方される現状がある。

医師は効率や制度上の都合で処方箋に依存し、現場でEMDRを実践する機会も少ない。

こうした医療制度の中で、慢性的なトラウマを抱える人々が本質的な治療を受けられる環境は、まだまだ限られている。

私のように経済的余裕も医師も頼れない場合、独学で取り組むしかない。

もちろん、余裕と熟練した医師が揃えば、そちらを選ぶだろう。



この記事は、マ ヰ ク ロ ドー ス記録 DAY1〜3 死 路 私 便 智 世 子編から抜粋したものです。

pneumalogue(心生ぬぅま)
記事を書いた人
pneumalogue

人生で最初に記憶しているのは——寝ている間に受けた、父親からの性 的加害。

抵抗し、逃げたのに、翌朝には母親から「よかったね」と抱き寄せられた......。

あまりにも奇妙で、長い間、ただの悪夢だと思っていました。

このような狂った世界観の中で育った私の視点で言葉を綴って、闇を照らしていきます。

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